気温の高い時期に気を付けないといけないのは、なんといっても駄目になった食べ物にあたってしまうこと、食中毒ですね。
生ものには気を付けている方も多いと思いますが、じつは忘れられがちなのがカレーによる食中毒です。
カレーの食中毒を引き起こすのはウェルシュ菌という細菌なのですが、この菌が曲者なんです…。
今回はそんなウェルシュ菌の予防方法について述べていきます。
ウェルシュ菌とは?
出典:Wikipedia
ウェルシュ菌は自然では河川、下水、海、土壌中に広く分布し、ヒトを含む動物の腸内細菌群における主要な構成菌でもあります。ちなみに悪玉菌です。食品では、牛肉、豚肉、鶏肉といった食肉や魚などに多く存在します。
人の体内にもいる菌なのですが、増殖し過ぎると暴挙を起こします。
ウェルシュ菌がカレーで繁殖しやすい理由
ウェルシュ菌がカレーの中で増えてしまうのはなぜでしょうか?
それは 高温に強いことと嫌気性であることと徐々に冷却される間に急速に増殖すること です。 ウェルシュ菌の他の菌とは異なる、動物の腸内にいる菌特有の性質が関係しています。
高温でも死滅しない
食べ物は火を通せば食中毒にはならないというイメージがありますが、ウェルシュ菌は熱に強い芽胞(バリアのようなものです)を作るので、高温でも死滅しないんです。なので加熱調理しても、多くの他の細菌は死滅しますが、ウェルシュ菌は生き残ります。
底の深い鍋で煮込むカレーは絶好の生育環境
またウェルシュ菌は嫌気性(増殖に酸素を利用しない、ウェルシュ菌はこのなかでも偏性嫌気性といい大気レベルの濃度の酸素で死滅します)なので、酸素に触れにくい環境で生存しやすいんです。まさに底の深い鍋でじっくり煮込むカレーの中心部や底部はウェルシュ菌にとって絶好の場所なんですね。
ウェルシュ菌による食中毒が給食病と呼ばれるのもこの性質が関係しています。一度に多くの量を作る施設などでは、作る分が多い分鍋の中心部や底部では酸素のない状態になりますからね。
しかしこれだけでは食中毒を起こすまで増殖することはありません。問題は三つ目の性質です。
カレーは一晩寝かせるとおいしくなると言われていますが、これはウェルシュ菌にとっては好都合。この細菌は43〜47℃の増殖に適した環境になるまでは芽胞を作り息をひそめていますが、適正温度になったらおよそ10分に二倍のペースで増殖します。
カレーのように作った後鍋の中で徐々に冷えていく食べ物の中では恐ろしいスピードで増殖することになります。(なんと8時間後には281兆倍に!!)
二日目カレーはウェルシュ菌の温床となっている可能性があるんですね。
ウェルシュ菌を増殖させない!作るとき、保存のときに気を付けたいこと
ウェルシュ菌が増殖するメカニズムを見るとどう対処すればいいか分かってきます。
作るときに気を付けたいこと
1.食材は新鮮なものを使う
ウェルシュ菌は食材の中でも増殖します。食材にも気を付けましょう。
2.調理中はよくかき混ぜる
カレー全体に酸素が触れるようによくかき混ぜましょう。底までしっかりとかき混ぜることが大事です。
保存のときに気を付けたいこと
1.保存しない
カレーは暖かい時期は作った日に食べきってしまった方が食中毒は避けられます。そこまでいかないにしても、一度に多く作りすぎないことは重要です。
2. 冷蔵保存する
ウェルシュ菌は自分が増殖しやすい環境になるまでは殻に閉じこもって増殖活動をしません。冷蔵庫にしまっておくことで過剰な増殖は抑えることができます。
3. 複数の容器に分ける
鍋などで保管するより、容器に分けて保存することで触れる空気が多くなりウェルシュ菌の増殖は抑えられます。
4.底の浅い容器で保存する
底の浅い容器に移すことで触れる酸素を増やすことができます。
5. 食べる直前に加熱する
ウェルシュ菌は加熱しても死にません。ただウェルシュ菌が作る毒素は、加熱することである程度無害化します。食中毒を避けるには必要なことの一つです。
まとめ
いかがだったでしょう?僕自身食中毒のイメージが大きく変わりました。意外なものでなることもあるんですね。
美味しいカレーで食中毒なんかになったら、たまったもんじゃありません。カレーだけではなくシチューやスープもウェルシュ菌が増殖しやすいので気を付けてください。ではでは!